川端康成の小説「古都」には、
夏の京都は燃え上がる炎のような空だという表現があります。
本当に、盆地の京都は燃える暑さで、「油照」とも形容されるほど。
ところで、川に京と書いて「涼」と読みます。暑さあるところにこそ涼しさあり。
今回は、「貴船」についてお話させていただきます。
鴨川の源流をなす貴船川は、ホタルや鮎などが棲む深山幽谷の清らかな渓流。
夏ともなれば、料理旅館のしつらえた納涼川床がお目見えします。
言わずと知れた貴船の夏の風物詩です。京の奥座敷と呼ばれる貴船には、
古くから涼を求めて多くの人々が訪れました。
まるごと自然に囲まれた川の上のダイニングは風情にあふれ、
足元を流れる渓流の響きが爽やかな涼感を誘います。
河畔に建つ貴船神社は1600年以上の歴史を持つと言われる水の神様で、
縁結びの御利益でも昔から知られています。「和泉式部日記」の著者であり、
数々の恋愛遍歴を重ねた女流歌人の和泉式部。彼女も、この神社に救いを求めた
女性の一人でした。夫の心変わりを知った和泉式部が貴船神社にお参りすると、
やがて願いかなって夫婦円満に戻ったと言われています。
樹木の生い茂る神社の境内はまた、
夏の日差しを和らげてくれる格好の避暑地でもあります。
貴船に行く機会ががあれば是非立ち寄ってみてください。
調理部・小田