紙面が限られたDMや、WEBのショッピングページだけでは、お伝えしきれない、
『作り手のモノ作りに対する、「こだわり」や「思い」』をお届けするのが、
この「権太呂の厨房から」。
今回は料理部長大森が担当した、『うらら鍋』についての思いや、形にするまでの苦心を
振り返って、カタログ同封のご挨拶状にしたためた文章を紹介致します。
春は名のみの寒さが続くこの時期には、温かいご馳走がまだ恋しいものです。
春号から、私が担当した「うらら鍋」誕生のいきさつや思いをご紹介いたします。
自社の通信販売では美味しさ以外に「旬」と「面白さ」を大切にしております。
表題の「雲枕(くもまくら)」は私の造った造語で、「ふんわり浮かぶ白い雲」を
春の象徴として表現しました。
その白雲をテーマにし取り組みましたのが、この度ご紹介しております「うらら鍋」です。
鍋をはじめるふたを開ける瞬間にふんわりとした白い雲が目に飛び込み、
「ワァー!」と感動して頂きたいというのが出発点でした。
ご提供するその「白雲」は、卵の白身を泡立て、メレンゲにしたものを蒸したものですが、
ここに辿り着くまでが失敗の連続でした。山芋のとろろを浮かべてみたり、ふわふわの
真蒸(しんじょう)を浮かべてみたりと、色々試して見ましたが、思い描く綿菓子のような、
「軽く儚く消える」イメージにはどれも程遠いものでした。
ある時、「生クリームを出汁に浮かべてみたら?」と、ひらめきました。
しかし、ふわふわの状態を維持するための新たな課題に突き当たり、試作を繰り返す
日々が続きました。そして偶然、ある一定の温度で蒸し上げれば、ふわふわの状態が
続くことがわかったのです。「やったぞ!」と感じた瞬間でした。
このようにして行きつ戻りつしてようやく形になった「うらら鍋」ですが、その趣向や味わいで
皆様の食卓に”のどかな春”をお届けできれば幸いです。
京都権太呂 料理部長 大森政嗣