我々、調理者がいつも使っている包丁は、どちらかと言えば、
洋包丁なのですが、今回は和包丁についてお話ししたいと思います。
今や、ユネスコの無形文化財に登録されている「和食」。
世界的にも注目されて、和包丁の輸出も多くなり、
外国人観光客が日本の刃物店で買い物をされている光景をよく目にします。
関西では、大坂の堺が有名ですね。堺と言えば昔は有名な鉄砲の生産地でした。
その鉄砲を作っていた職人たちの、高度な技術で和包丁が作られるようになったそうです。
では、なぜ和包丁はよく切れるのか?
一般的な和包丁は、表の部分に「軟鉄」という炭素を含まない軟らかい鉄を使い、
裏の部分に「鋼」という炭素を含む硬い鉄を使います。その二つの鉄をくっつけて
刃の部分に「鋼」がきます。
そうして出来た物を、760℃から800℃で焼き、叩いてより固く強度を付けます。
叩くことで鉄を形成する組織が延ばされ、繊維状になることで固くなります。
余談ですが、750℃以下で焼いた場合は、「なまくら・鈍ら」といい、
800℃以上で焼いた場合は「焼がまわる」というそうです。たまに耳にするフレーズですね。
焼きが終わると、今度は研ぎ師が形を成形し、研ぎ、見た目も綺麗に磨き上げます。
形を整える段階で、包丁の裏の部分に「樋」というくぼみを付けます。
1㎜にも満たない程度に真ん中がほんの少しくぼんでいます。
これをつけることで、片方の刃先の角度がより鋭角になり、よく切れるようになるのです。
いずれにせよ、毎日、使った後は研いできちんと手入れすることで、
初めて切れる包丁として使えるようになるわけです。
切る方も、切られる方も切れ味が鋭い方がいいですね。
(小田)